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Ukulele

2025/1/17

NOSTALGIA

NOSTALGIA Guitar & Ukulele



下の写真は、Martin Style 3。
普遍的なデザインといい、音色といい、誰もが欲しくなるウクレレ史上最高傑作の一つだと思ってます。
上は1960年代、下は1940年代製です。

「ビンテージのマーティン Style3のような音色のウクレレが作れないものか…」

そんな思いで令和元年にスタートしたブランドが”NOSTALGIA Guitar & Ukulele”です。

製作依頼したのは秋田在住のルシアー斉藤健さん。

斉藤さんとの出会いは、2012年のTokyo ハンドクラフトギターフェス。
近寄りがたいギターの横に、こっそりと木ペグのビンテージマーチンStyle1タイプのウクレレを展示されてました。
そのウクレレを購入したのがきっかけで、その後何本かオーダーさせていただき、数年後にはビンテージマーチンの音色再現がコンセプトのコラボブランド、NOSTALGIAをスタートすることになりました。

ちなみにこちら↓がその時展示されていた、斉藤さん作の近寄り難いバロックギター。
ロゼッタの写真を撮ったのを覚えてます。

斉藤さんは写真のような古楽器やクラシックギターなどを、大きな機械をつかうことなくノミ、カンナで材木を整形、オール膠接着、塗装はシェラック、フレンチポリッシュという伝統的な手法を用いて、全ての工程をお一人で丁寧に製作されています。

なので、普段通りにウクレレを作っていただいても、伝統的な手法での製作になります。
製作過程と今までの作品はNOSTALGIAのインスタグラムでチェックしてください。

製作にあたっては、私物のビンテージマーチン2本や、斉藤さん所有のディットソン、修理で得たデータを参考に、できる限り本物に近い”鳴り”を追求していただいてます。

先日、珍しく同時に4本入荷したので音色チェックしました。
入荷当日で出来立てほやほやなのと、iphoneでサクッと撮ったビデオなのであまり参考にならないと思いますが、なんとなく雰囲気は伝わるかと思います。
左がビンテージマーチン、
2本目からはノスタルジアで、
ハワイアンコア、
ハワイ産キューバンマホガニー、
ハワイ産キューバンマホガニー・ディットソン、
ビンテージホンジュラスマホガニー・ディットソンです。

ちなみに弦は全てワースのブラウン・カスタムゲージを使用。
ビンテージStyle3をお持ちのワースストリングスの高橋社長に相談させてもらい、ライトゲージとミディアムゲージの間くらいのテンションに設定されています。

木材調達は基本的に私が担当。
ブランド立ち上げ当初、主にネック、ボディに使用している天然乾燥50年以上のコンディションの良い上質なホンジュラスマホガニーを、運よくまとめて調達できました。(写真↓)
「古いから良い」と一概に言えませんが、古い方がコンディション的に安心ですし、NOSTALGIAのコンセプトにはベストチョイスと思ってます。
もちろんマホガニー以外のコアや指板用のエボニーなどもできる限り古くて状態のいい材のみを厳選しております。

現在のところサイズはソプラノのみ、シェイプは通常の8型(写真左)と、オリバーディットソン・ドレットノート型(写真右)の2種類。

ポジションマークは下記3通りと、通常のドットタイプ。

基本的にはPegheads社の4:1のギヤペグを採用しておりますが、Pegheadsが生産中止になりましたので、在庫終了次第、変更いたします。
いろいろ探してますが、いいのがないんですよね・・・。
オプションで写真右下のハンドメイド・ウッドペグも選べます!
ウッドペグ&バーフレット仕様にすると、パーツも含めてオール・ハンドメイドになりますよ!


こだわりポイントをいくつかご紹介。

・トップ、バックはブックマッチではなく、ワンピース仕様。
ここ、ビンテージマーチン・サウンドの重要な要素だと思っています。
ちなみに今のところネックも全てワンピース。
加えて、オリジナルに準じてる(であろう)、天地、左右を合わせた贅沢な木取りをしています。

・指板センターの装飾(3本線)は溝を掘って埋める”象嵌”ではなく、ビンテージ同様挟み込んで製作。
手間もかかりますし、指板のサウンドホールにかかるエンド部分の数ミリしか見えない小さなディティールですが、マニア心をくすぐりたい箇所です。(↓写真の⭕️のところ)

・ダブテイルジョイント

その他、
・接着は全て膠(ニカワ)
・パミスで目止め、セラック、フレンチポリッシュ塗装
で製作されています。

また、こだわりのオプションも2つご紹介。

・バーフレット
バーフレットは基本的にパーツとして現在は売っていないので、洋白板から手作りされます。
斉藤さん曰く、
バーフレットはフレットと指板溝との密着度が高くなる = ネック強度が上がる = 振動伝達性もよくなる = 鳴りがよくなる。
フレットを一から作るのは大変ですけど、ネックの鳴りも変わってやっぱり音もいいですよ、とのこと。
バーフレットについて

・積層ナット
牛骨/エボニー/牛骨 や、
下記写真のマンモスアイボリー(マンモスの牙)も選択できます。
ビンテージどころの話じゃなくて超古いので雰囲気ありますね。

立ち上げ当初からルックスの完コピを作って欲しいということではありませんでしたが、好きな音色や弾き心地のウクレレを追求した結果、いわゆる戦前スペック、プリウォー・マーチンのStyle3のスペックへたどり着いている感じです。
サドルも細いタイプです。

あと、マーチンとの大きな違いが1つ。
バインディング材をアイボロイドではなく現在のところ全て木製にしております。
マーチンの定番修理で、アイボロイド・バインディングが経年で縮んだことによるウエスト位置の剥がれ、がありますが、それを回避するため木製に変更、アイボロイドの雰囲気に近い白くて杢目の目立たない高級材「ホリーウッド」を基本的に使用しています。(初期はメイプルでした。)
厳密にいえば音に影響している箇所かと思うので、アイボロイドの方がよりビンテージマーチンに近づく可能性もあると思いますが、今のところは音響特性も良くてウエスト剥がれの心配もない方を選択してます。
合わせてエンドのオーナメントやヘッドのカイトインレイもホリーウッドです。

あとケースは現在のところGatorのジャーニーマンをおつけしておりまして、ボディと同じ材にNOSTALGIAのハンコを押したプレートに変更してます。


こちら、ハワイのウクレレプレーヤー、コーリーフジモトさんご来店時に、キープしていたシリアルNo.1を試奏してもらった時のビデオです。(ピンボケですみません)



2025年1月現在で32本製作、その全ての木材、スペック、板の厚みや重量などをメモしてまして、毎回テーマを持って実験しつつ、斉藤さんと二人三脚で日々楽しく研究を重ねています。
同時に100年前経過してもなお素晴らしいと思える楽器を作っていたマーチン、知れば知るほど凄さも感じます。

見た目だけのコピーは巷に溢れていますが、ビンテージマーチンの音色にフォーカスし、手間暇惜しまず当時の手作業の持つ柔らかい雰囲気をも再現しているウクレレは他に無いんじゃないかな、と。

マーチン・ファンも納得いただけると思いますし、そうでない方でも鳴りの良さ、気持ちよさは十分感じていただけるはずなので、ぜひ一度お試しください!